4月21日の日刊ゲンダイに中川草講師の記事が掲載されました。  「新型コロナウイルスは致死率9%のSARSと何が違うのか?」

2020年04月21日

多くの人は新型コロナウイルスを「ちょっと重いインフルエンザ」とイメージしているようだが間違いだ。実は致死率9・6%の「重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス」と同じコロナウイルスで、遺伝子もかなり似ている。どのくらいか? 国立遺伝学研究所博士研究員、ハーバード大学客員研究員などを経て東海大学医学部分子生命科学講師を務める中川草・理学博士に聞いた。

 

「それぞれのウイルスを構成する遺伝子の類似度はおよそ7~9割です。ただし、新型コロナウイルスはSARSウイルスが進化したものではありません。両者は共通する祖先から分岐して別々に進化したウイルスで、親戚のような存在です。お互いを比較して類似度が最も低い遺伝子のひとつがS遺伝子です」

ウイルスの突起を形成しているスパイクタンパク質(Sタンパク質)には、感染先の細胞の表面にある受容体と結合してウイルス外膜と細胞膜の融合を媒介する役割がある。S遺伝子はそのSタンパク質の性格を決めて、それを忠実につくり出す設計図が書かれている。

(続きは日刊ゲンダイ公式ウェブサイトへ)

 


医学部の大友助教らが神経細胞の新たな培養方法を提案しました(東海大Webより)

2020年04月21日

医学部医学科基礎医学系分子生命科学の大友麻子助教と中川草講師、上田真保子奨励研究員(いずれもマイクロ・ナノ研究開発センター兼務)らが、溝加工を施した高分子超薄膜を使って神経細胞を培養する新たな手法を提案。その成果をまとめた論文「Efficient differentiation and polarization of primary cultured neurons on poly(lactic acid) scaffolds with microgrooved structures」が、学術雑誌『Scientific Reports』印刷版に掲載されました。

超高齢社会を迎え、国内では加齢に伴って発症リスクが高まるアルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の患者が増えていますが、効果的な治療法が見つかっていないのが現状です。こうした疾病のメカニズムを解明し、薬剤を開発するためには人工的に培養した神経細胞が用いられていますが、培養神経細胞は実験ごとに状態がばらつきやすく、均一な条件での研究や、薬剤の作用を定量的に測定することが難しい場合があります。

大友助教らのグループは、工学部応用化学科の岡村陽介教授(マイクロ・ナノ研究開発センター兼任)、東京工業大学藤枝俊宣講師、ならびに早稲田大学理工学術院武岡真司教授らよって開発されたポリ乳酸(PLA)を材料として作製したナノシートを培養基材として使用しました。ナノシートは現在までに、創傷被覆材や顕微鏡観察の際のカバーガラスの代替品としてなどさまざまな用途で使用され、注目されています。このナノシートに立体的な溝加工を施したものと、加工しなかったものを細胞基材として使って、マウスの大脳新皮質由来の神経細胞を培養。オールインワン蛍光顕微鏡や次世代シークエンサーを用いて細胞形態と遺伝子発現解析を行った結果、溝加工のないものでは神経突起がランダムに進展する一方、溝加工を施したナノシートでは神経突起の進展方向が一定に制御されるだけでなく、シナプスの形成にかかわる遺伝子群の発現が早まることを明らかにしました。これまでの研究でも培養基材の形態が神経細胞の形態形成や遺伝子発現パターンに影響を与えることは示唆されていましたが、細胞分化の促進や培養細胞の均一性に大きな役割を果たすことを明らかにしたのは本論文が初めてです。

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医学部の中川草講師らの「新型コロナウイルスの比較ウイルス学と比較ゲノム解析」に関する特別記事が『実験医学』に掲載されました

2020年04月21日

医学部医学科基礎医学系分子生命科学の中川草講師(総合医学研究所/マイクロ・ナノ研究開発センター)と京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授による「新型コロナウイルスSARS-CoV-2の比較ウイルス学と比較ゲノム解析」と題した特別記事が、『実験医学』5月号(羊土社)と同オンライン版に掲載されました。ゲノム科学やバイオインフォマテフィクスが専門の中川講師は、ウイルスと宿主の共進化などについて研究しています。この記事は同社から依頼を受けて寄稿したもので、新型コロナウイルスSARS-CoV-2のウイルス学的な位置づけや性状、ゲノム構造と突然変異などについて、これまで多くの科学者により発表された研究成果をもとに、比較ウイルス・ゲノム学的な視点から概括しています。

中川講師は、「動物やヒトに感染するコロナウイルスは、知られているだけで100種以上あります。SARS-CoV-2にはセンザンコウやコウモリに似た塩基配列が認められており、全く未知のウイルスというわけではありません。ウイルス学の研究者の中には、“ウイルスによる新たなアウトブレイクはいつか起こりうる”という危機感を持ち、さまざまな動物からコロナウイルスなどの新規ウイルスを同定するなどの研究を積み重ねてきた方々がいます。その成果がSARS-CoV-2の分析や同ウイルスによる感染症の診断・治療法の開発にも生かされつつあります。新型コロナウイルス感染症に関しては、感染拡大の状況や対策といった疫学的な視点からの情報は数多く提供されていますが、一方でウイルスそのものの性質については日本語でアクセスできる文献が限られていたように思えたので、関連の研究を含めてぜひ多くの人に知ってほしいと思いました」と寄稿した理由を語ります。

「ウイルスは太古の昔からヒトを含めたさまざまな生物に感染し、“いたちごっこ”のように共進化を続けてきました。そして、ときにはウイルスの配列の一部は生物の遺伝子に組み込まれ、生物の多様な機能を担う原動力となることも知られています。今後も、ウイルス感染で組み込まれた遺伝子によりヒトが獲得した機能や免疫機構の変化、ウイルスの多様性などに着目しながら比較ゲノム学的なアプローチによる研究を続け、将来的には感染症の予防や診断・治療といった臨床応用にもつなげたい」と話しています。

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※『実験医学』オンライン版に掲載された記事はこちらからご覧いただけます。
なお、「羊土社HP会員」の登録が必要です(無料)。
https://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/special/SARS-CoV-2.html

工学部の葛巻教授の研究グループがAMEDの橋渡し研究戦略的推進プログラムに採択されました(東海大Webより)

2020年04月20日

工学部材料科学科の葛巻徹教授らのグループによる研究プロジェクト「腱形成メカニズムの解明による生体組織由来の再生人工靱帯の創製」が3月17日に、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「橋渡し研究戦略的推進プログラム」の令和2年度橋渡し研究異分野融合型研究シーズに採択されました。このプログラムは、優れた基礎研究の成果を臨床研究・実用化へ効果的に橋渡しできる体制を構築し、革新的な医薬品や医療機器等の創出を推進することが目的です。今回採択されたのは、その一環として首都圏の私立大学をはじめとする臨床研究機関が結成している首都圏ARコンソーシアム「MARC」が展開しているもの。医学部を有する大学に所属する研究者のうち、医学部以外に所属する研究者が中心となって展開するプロジェクトを支援することで日本発の革新的な医薬品・医療機器の開発を目指しています。

人をはじめとする動物の靱帯は体の運動機能を支える重要な役割を果たしていますが、一度損傷すると元のように再生できません。そのため、体の他の場所から持ってきた靱帯を移植する方法が用いられていますが、移植元の場所にも負荷を与えることになる欠点があります。葛巻教授らは、そうした課題を解決するため、靱帯再生のメカニズムを総合的に解明し、生体組織を使って人工靱帯を作成する技術の研究を展開。本学の総合科学技術研究機構によるプロジェクト研究の支援などを受けながら、医学部や理学部、農学部のほか、金沢大学や福井医療大学の研究者らと共同で進めています。

これまでの研究では、靱帯の原料となる分泌組織を生体「腱」から採取し一定の力をかけるとコラーゲン線維の架橋・成長が促進されコラーゲン線維が一方向に配列することを明らかにするとともに、コラーゲン産生細胞の特定とコラーゲン生成のメカニズムや腱から分泌される組織の構造・成分などを分析してきました。今回採択されたプロジェクトでは研究をさらに進展させ、分泌組織をシャーレ上で培養することや、3Dプリンティング技術を使ってヒト線維芽細胞集合体(スフェロイド)を円筒型に積層した構造体を作製し、テンションをかけながら培養した際の作用を調べる計画です。

葛巻教授は、「断裂した腱・靱帯の自己再生に関する研究と、生体内から取り出した分泌組織や細胞をもとに人工的に培養・成長させて人工靱帯を作る研究の両面から再生医療にチャレンジしています。腱・靱帯損傷治療に大きな可能性が開けている一方、組織の強さや成熟度などヒトへの応用に求められる適切な組織をどう設定するのか等、取り組むべき課題は多く残されています。今回取り組む実験は、様々な場面で形成されるコラーゲン線維組織の特徴を解明し再生メカニズムへの理解をさらに深め、研究を次のステップに引き上げる上でも非常に重要になると考えています。靱帯の再生が可能になれば、多くの人の健康で活力ある生活の維持に役立つことは間違いありません。今後もさまざまな分野の専門家と連携しつつ、技術の実用化を目指していきたい」と話しています。

 

葛巻 徹教授                           独自開発した牽引培養装置

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