4月15日の日刊ゲンダイに中川草講師の記事が掲載されました。

「緊急企画 新型コロナを正しく恐れる 新進気鋭ゲノム学者語る 人間からネコやトラに感染した意味」

2020年04月15日

ネコに続いて今月上旬には米国ニューヨークの動物園でトラに新型コロナウイルスの陽性反応が出たという。人間以外の動物に感染が広がっていることを不気味に思う人もいるのではないか。

イヌやネコなどそれぞれの生物種ごとに感染できるコロナウイルスが決まっている。なぜ新型コロナウイルスは種を超えて感染拡大したのか? 国立遺伝学研究所博士研究員、ハーバード大学客員研究員などを経て東海大学医学部分子生命科学講師を務める中川草理学博士に聞いた。

「ウイルスは遺伝子構造の違いによりDNAウイルスとRNAウイルスに大別されます。コロナウイルスはRNAウイルスで、RNAの塩基配列に遺伝情報を格納しています。ウイルスは単位時間当たりの遺伝子に蓄積される変異の数、すなわち進化速度が非常に速いことが知られています。新型コロナウイルスもその例外ではなく、人間の核ゲノムのDNAと比べておよそ100万倍も速いです。そのため、今回の新型コロナウイルスが、短期間で変異してネコやトラに感染できるようになったと思っている人もいるかもしれません。しかし、それは間違いです」

(続きは日刊ゲンダイ公式ウェブサイトへ)

 

↑上記に紹介しました記事について中川講師から補足コメントがございます。

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文字数の関係で細かい話ができていないので、ネコで新型コロナウイルスが「空気感染」する可能性と、ネコが新型コロナウイルスの中間宿主ではない可能性について、下に更に詳細記します。4月8日にオンライン公開された米国サイエンス誌に掲載された中国のハルビン獣医学研究所からの論文(https://science.sciencemag.org/content/early/2020/04/07/science.abb7015)では「空気感染」という言葉が確かに使われています。ただし、この実験では、高濃度の新型コロナウイルスを猫に噴霧して感染させた実験のため、そもそもの濃度が高かった可能性も他の研究者から指摘されています(https://www.nature.com/articles/d41586-020-00984-8)ので、「空気感染」はあくまでも実験室レベルでの話です。今後他の研究グループからの追試が待たれるところです。また、それではネコが原因で今回の新型コロナウイルスが広まったかもと考える人がいるかもしれません。プレプリント(査読前の論文)の報告ですが、武漢に生息する猫の抗体検査が大規模に調べた研究成果があります(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.04.01.021196v1)。その結果、新型コロナウイルスの流行以後にサンプリングを行った猫には抗体があった、つまり猫の一部は新型コロナウイルスに感染していたと考えれれるが、それ以前の武漢で採取された猫の血液からは抗体は検出されませんでした。つまり、猫の集団中にもともとウイルスがあったわけではないと示唆されています。この結果から、猫が媒体となって新型コロナウイルスを人に感染させたのではなくて、人から猫に感染した可能性が高いと考えられます。2020年4月15日 中川追記